【週刊 戦略調達 vol.61 2010.6.8】
事業仕分けを仕分けする~(1)意義を確認する
【今週のトピックス】4月から5月にかけて独立行政法人や政府系の公益法人が行う事業について
の事業仕分けが実施されました。これまで行政の仕事にはなかなか厳しい
目が向けられなかったので、対象となった事業の廃止や規模縮小、見直し
が次々と打ち出されました。
厳しい競争環境に晒されている企業では、これほど簡単に見つけ出される
ようなムダはなかなか残されていないかもしれませんが、反対に、事業仕
分けでは、初歩的な故に、ムダな支出や支出管理の手法の典型的なケース
の宝庫です。今回から数回に分けて、事業仕分けに見られる支出管理の典
型的な手法を整理していきましょう。
例えば、今回廃止判定されたものの一つに女性誌にターゲットを絞って、
原子力・エネルギーに関する記事広告を掲載する事業があります。この事
業は、あるアンケート調査(2005年12月「エネルギーに関する世論調査」
内閣府大臣官房政府広報室)で原子力発電について「積極的に推進してい
く」「慎重に推進していく」の合計が、男性で60%、女性で51%となった
ことを根拠に、女性層が日頃目にする雑誌に原子力・エネルギーに関する
記事を掲載することで、女性層の原子力に対する理解を深める機会を提供
する必要があるとの事で、年間約1,000万円が2007~2009年に掛けて使わ
れていました。
資金使途は、女性に向けたセミナーを開催し、女性誌ESSE(53~60万部発
行)に見開き2ページで2~4回の出稿に充てられていました。ちなみに、
提出資料ではセミナーと記載されていますが、セミナーの内容は、「電気
のふるさとの女性による料理教室&エネルギートーク」、はい、料理教室
です。料理教室の参加者は、2009年は2回開催され13名と20名、2008年と
2007年の数字はなぜかありませんでした。
原発推進政策のために料理教室。確かに、これまでの行政では考えられ
ないようなクリエイティブな政策です。でも、
- 料理教室で原発推進政策の理解が深まる?
- 60万部発行雑誌に掲載とはいえ、どれだけの人がこのPR記事を読む?
- 記事を読んだ人がどれだけ原発推進政策の意義を理解し、サポートに回
る?
- 多くの女性の支持を得たところで、原発推進政策の問題は解決される?
- そもそも原発推進政策の課題は、男性・女性の合計で推進派が55%、女性
で51%ということが問題?
疑問がつきません。事業仕分けでも、こうした疑問が提示され、廃止判定
となりました。
このように事業のそもそもの意義を改めて見直すことによって、廃止、縮
小、見直しとなった事業は、今回の事業仕分けでも非常に多くありました。
例えば、20年続いた省エネ大賞も、この事業の目的である省エネルギー意
識の浸透や民間で同種の表彰が行なわれているといった環境変化を理由に
廃止となりました。
省エネ大賞に関らず、こうした表彰制度は、大手企業や著名企業を後追い
で表彰しているものが殆どで、その効果に常に疑問を感じています。本来
は、こうした表彰制度は、自力で販促できる大手企業や著名企業ではなく、
技術力はあるが営業力が欠けている無名の中小企業やベンチャーを率先し
て採り上げられるべきと考えます。特に、公費・国費を投じている時こそ、
公益の観点から受賞大賞を評価すべきです。ただ、受賞企業が頓挫するこ
とを怖れてか、多くの企業表彰制度で既に成功した企業を表彰する傾向に
あります。表彰されなくても躍進することができる既に成功した企業を表
彰することで、世の中にどのような価値を提供しているのか、まったく理
解ができません。表彰制度については、それによって新たにどのような価
値を世の中に生んでいるのか、自分達がお金を掛けて、わざわざ他人の成
功を表彰する意味は何なのかといった角度から、事業の意義を確認する議
論がもっとあるべきと考えられます。
これらのケースのように、適宜、事業のそもそもの意義を改めて見直すこ
とは、事業の目的が達成されていたり、環境が変化することによって事業
の意義が失われていたりするので、行政だけでなく、民間も含めた何れの
組織の支出管理においても有効な手法です。
企業での事業・活動の意義を確認することで支出のムダを明らかにする、
支出を適正化する例としては、広報、マーケティング、販促関連、トレー
ニング、経営改善活動やそれに関るコンサルティング、IT導入などでは、
そもそも、その活動の意義はなんなのかということを確認していくと、意
味がなかったり、意義と実際の活動のずれがあったり、別のやり方の方が
効果的といったものがボロボロ出てくるものです。
直接材であっても、その仕様、その加工、貴社の要求が、製品・サービス
のコンセプト(意義)に合致しているかという観点で見直すと、過剰仕様、
過剰品質となっている部分を浮かび上がらせることができます。こうして
見ると、事業仕分けで用いられている事業・活動・仕様・要求そのものの
「意義を確認する」という手法は、我われが開発購買で用いてる手法と共
通の手法ということが分かります。
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【編集後記】
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
今回は、事業仕分けの手法の整理についての第一弾でしたが、いかがだっ
たでしょう。こうして整理してみると、まったく異なる分野で用いられて
いる手法が、結構、自分の業界、会社でも使えるということがあるもので
す。(山本)
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